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船坑内の船の部材の取り上げは順調に進んでいます。順調すぎて、保存修復が追い付かない面も出ていまして、取り上げ速度をスピードダウンすることにしました。また、作業効率を上げるためにクレーンをもう一基作りました。
これは、ただ単に一基より二基の方がより多く取り上げられるという単純な考えだけではなく、4m、5m、いや7mという長尺のものを取り上げるときには一基では不可能だからなんです。東と西にクレーンを据えて間を空け、そこに側板を設置し長尺のものを取り上げるのです。
今のところはまだそのようなものは取り上げ予定に入っていませんが、4mから5mにおよぶキャビンのパネル板が40枚あります。このときには長さもさることながら、幅や重さも重要なポイントとなるでしょう。取り上げ前半の山場です。
これらの作業を行うため2つの補強策をとりました。一つ目は機具や機械そして薬品などの整備です。それと再度、部材の安全性を高めるためのテストを行いました。このテストはこれから先50年100年経っても変質しない、劣化しないという保証をしなければならないので、慎重かつ丁寧に行う必要があり、今でも行っています。もし必要とあれば日本に部材を持ち込んで、カイロでのテストとは別に行うつもりです。これに時間がかかっているので、取り上げた部材が整理棚にたまってしまっています。
それと人材の補強です。修復師は何人いても十分とは言えませんが、やはり統制が取れる人数というのがありますので、多ければいいというものでもありません。今は日本人が少ないので1人か2人増員するつもりですが、意外と日本では修復師の需要が多く、いい人材を確保するのが難しい状況です。
エジプトではG.E.M.C.C.(Grand Egyptian Museum Conservation Center;大エジプト博物館修復センター)において、急ごしらえで修復師を育成しています。しかし急に作れるものではなく、経験もあり、きちんと仕事をする若者を何人か選びました。修復師の仕事は考古学の中でも根気がいるものですから、若くて意欲のある人がいいのです。
というわけで、本年(2014年)3月末までには体制を立てて作業に入ろうと思っています。今後はラマダン(6月中旬)までの約3か月間が大切な時となるでしょう。今回、タイミングが良く、エジプトのアル=アハラム紙が取材に来て下さり、記事が掲載されました。
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