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小康状態が続いているエジプト情勢ですが、内実はもう少し複雑なようです。
現政権とムスリム同胞団の対立状況だけでなく、現政権にもムスリム同胞団にも与しない勢力が出てきました。
過激なのは、「エジプト革命を引き起こした」と自負する若者グループです。自分たちがモバラク政権を倒してエジプトを民主化したのに、その後、ムスリム同胞団が自分の利益のために国を食い物にし、また、その後は軍部が自分の利権を守るためにクーデターを起こしたとし、再び人民の手による革命を起こさなければならないと若者たちに訴えています。
実際は、これらの若者が革命を起こしたというのは錯覚というか強弁で、バックには軍の親米派と反モバラクの実業家が金と知恵を使い、革命を起こさせたという事実がばれています。が、若者は少数になってしまいましたが立ち上がっています。しかし、主導者3人がすでに軍に拘束されてしまい、先行きはそう明るくありません。学生を中心としたデモも、大学高校が全てテロ警戒のため休校になっていますので、校内立ち入り禁止令で学校内でデモも出来なくなっていて、盛り上がりに欠けています。
それに便乗したムスリム同胞団も、デモ動員に1人1日200ポンド(≒3000円)の日当が支払われていることが分かり、社会的問題になっています。というのは、デモで怪我をした子供の親がムスリム同胞団に治療費を要求したことが明るみに出たのです。
ムスリム同胞団は非合法とされましたし、若者もダメということで、現政権が安泰かといいますと、そうはいかないのです。軍部内で、親米派と親ロシア派が強く反発しあっているのです。
親米派は前の国防大臣タンタウィ氏とその部下サミー・アナン氏で、同氏はタンタウィ大臣のときの軍参謀総長でした。それと、現大臣(すでに辞職し大統領選の準備中)のシシ氏です。シシ氏は親ロシア派で、すでにロシアの軍事援助30億ドルの約束をしています。
おそらく、大統領選もこの2人で争われると思いますが、シシ氏圧勝とはいかないようです。というのは、サミー・アナン氏が勝てばの話ですが、アメリカは新大統領が誕生したら軍事援助再開をほのめかしています。
こういった状況下、大統領選は4月末から5月初めとされています。急いでいるのはシシ派、なるべく遅い方がいいのはサミー派です。国民の大多数はシシ待望論ですが、シシ氏はナセル主義者ですから、勝利した後、かなりの粛清が行われるものと考えられ、危ないと思った実業家は財産の海外移転を始めているようです。シシ氏が勝てば社会主義が復活し、国としては良くなるものと思われますが、中東情勢ではかなり変化が出てくるものと思われます。
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