今回エジプトで参加したシンポジウムは、エジプト高等教育省兼科学研究担当国務省(Ministry of Higher Educational and Scientific Researches)と日本学術振興会(Japan Society for Promotion of Science)の共同主催によるもので、「第3回エジプトと日本の共同によるリモートセンシング法を考古学に応用した例のシンポジウム」というとても長いタイトルのものでした。2009年2月14、15日と、SCA (Supreme Council of Antiquities)のザヒ・ハワス長官とNARSS (National Authority for Remote Sensing and Space Science)のアイマン エル・デソーキ長官が主催したもので、会場はカイロ市ザマリク地区にあるSCAの会議場で行われました。
 前置きが長くなりましたが、リモートセンシングを使うと遺跡探査や遺跡の現状がこんなによく分かります、という実例の発表会で、日本から4名、エジプトから11名の発表者がありました。NARSSからは4名の発表者がありましたがSCAからはゼロでしたので、費用を折半で負担したのにSCAの研究員はだめだ、とSCA長官は嘆いていました。考古学プロパーの発表も私たち早稲田大学のダハシュール北遺跡のみで、東海大学のエジプト上空の画像分析による遺跡の状態と今後の対策を除くと、他はすべてリモートセンシングの方法論など理論が中心でした。
 それにしましても、エジプトでの学会やシンポジウムの特徴は緊張感の無さです。それは発表者がではなく、出席者や関係者のです。まず、会場の外でアラビア音楽を流しているラジオが大音量で流れていて、扉を開ける度に音が入ってきます。会場内では聴講者の携帯電話の呼び出し音が10分おきくらいに鳴り、その度に出たり入ったり、人によっては中で話している人もいました。発表中に質問する人もいたりして、自由といえば自由なのですが、シンポジウムらしい荘厳さはなく、私などは発表の原稿を1行飛ばして読んでしまい、戻ったりしました。それでも聞いている人はきちんと聞いていて、質問もあるのですから、さすがエジプトです。
 基本的に私はこうした表向きの学術の集いは好きではないのですが、発表を依頼された時は断らないことにしています。というのも、こうした発表は通り一遍のもので、時間が限られていますので、表面的というか誰でも知っていることを発表する、いわゆる予定調和のものが多いからです。しかし、世の中これがなくなると、アカデミズムが見えなくなるというのも現実です。

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アケトスタッフ

吉村作治のエジプトピアを運営する株式会社アケトのスタッフです。