デイル・アル=バハリにあるハトシェプスト女王葬祭殿は、背後に切り立ったアル=クルンと呼ばれる崖を借景とした壮大な建築である。
ハトシェプスト女王は新王国時代第18王朝の女王で、好戦的なこれまでの王と違い、平和外交に徹した。
3段のテラス式の葬祭殿には、女王にまつわるさまざまな場面が描かれているが、なかでも第2テラス南柱廊には、女王のプントへの交易の様子やもらった貢ぎ物などが細かに描かれ、当時の国際間の交流を知る貴重な資料でもある。
南柱廊のさらに南には、ハトホル女神に捧げられた祠堂があり、牛の耳をした女神の顔をつけたハトホル柱が立つ。
デイル・アル=バハリとは、アラビア語で「北の修道院」を意味し、他にも中王国時代第11王朝のメンチュヘテプ2世墓などがある。